天然香料、人工香料?フレーバーティーの香りについて

あたたかい紅茶がおいしい季節になりましたね。朝晩で寒暖の差がありますのでご自愛ください。
さて、今日はお茶の香りについて書きたいと思います。お客様からの少し変わった問い合わせが続きました。答えるために調べたりまとめたりする必要があり、せっかくなのでここでもあげておきたいと思います。

 

ご質問のなかのひとつに当店のフレーバードティーにつかわれている香料が天然香料なのか、人工香料なのかという問い合わせがありました。天然香料とはなんだろうと最初それが具体的に何を意味しているのかわからなかったのですが、少し調べてなんとなく何を言わんとしているのか理解しました。
香料には完全人工合成のものがあります。私の大学での専攻は化学系だったので芳香族の有機合成実験とかでストロベリーやリンゴの香りなどを合成したこともあります。人間が感じることができる香りといっても、どの分子構造のものをどのような香りと感じるかはだいたいがわかっております。花や果物には実際その芳香成分があり、それを感じ取っているわけです。
バラの香りや金木犀の香りを人間は嗅ぎわけますが、それは芳香成分の分量の違いであったり、ちょっとした構造の違いであったりします。これらの芳香成分の割合を近づけることにより香りを”再現”するというわけです。

 

合成香料はガムなどのフレーバーで代表的ですね。グレープだとかアップルだとかストロベリーなどです。これらの香りは工業合成しやすいので、よく使われます。また安定的であることも重要な要素です。良い香りが時間が経ったら、臭いものになってしまっては食品としては利用することができません。変化することを利用してメロンからグレープに変わるとかそういうものもありますが、あくまで良い香りを損なわないことが重要となります。

 

芳香族はほんのちょっと構造を間違えただけで良い香りの成分が、”足の香り”になったりするオモシロイ世界でもあります。良い香りだったのでハンカチに染み込ませてもっていたら、しばらくたったらものすごく臭いチオールになってしまったなんて笑い話しがあります。食品に時間経過でそんな香りのものが使われていたら喩え人体に害のない成分だとしても(足の香りだってもともとは人間が分泌するのだから…)大変なことになりますよね。

 

他方、天然香料というものは、結論からいうと存在しません。存在しないというよりは、日本の食品衛生法に基づく添加物の表示等で”天然”って使わないでねと規定されています。つまり食品に関しては香料と天然は併記すべきではないというお決まりごとがあるようです。

”天然香料及び一般飲食物添加物の表示は、別添2及び別添3に掲げる品名により行うものであること。(略)「天然」又はこれに類する表現の使用は認められない”

www.ffcr.or.jp/Zaidan/mhwinfo.nsf/0/b09a70f498038a3c4925660b0005bc49?OpenDocument

ですが、香料のなかには上記のように全く天然由来のものを含まないものもあるため、それを区別するために天然香料と表現する場合もあるようです。食品の場合は法規的には適当な表現ではありませんが、フレーバーティーの中にはびっくりするぐらい強いのフレーバーティーもありますのでこれらを区別したいという心理もわかります。
でも人工合成といっても、人間だって何もないところからはモノをつくることはできないので、材料の材料をたどればかならずどこかで天然由来になってしまうんですけどね。

 

難しいですね。結局は調香のバランスの問題だったりするのですが、同じ香水を使っていても人によって使う量は違いますので…。やはり嗜好品ということになってしまいます。

 

香料以外、例えば花びらだけで着香するジャスミンティーなどのように、まったく香料と呼ばれるものを使用せずに制作されるフレーバードティーもございます。燻製など。このような場合には香料という原材料表記はいたしません。

香料そのものの添加が嫌な場合は、スタンダードな産地別の茶葉を買って、バラの花びらを別に買われてブレンドして飲まれているお客様もいます。上級者向けですが、通のかたにはそのような自前アレンジティーもオススメです。

 

他 参考) www.jffma-jp.org/course/