お茶からの放射性物質検出について

はぐら茶屋 店長の倉林です。当店は紅茶屋で、緑茶はあつかっていないのですが、お茶全体に不安と誤解がひろがりそうな懸念があるのでブログを書くことにしました。不安におもわれている方のために書きますので長くなります。ご容赦ください。ちょっと公開すべきか悩みました…。
結論だけ先にまとめておきます。現在おきているのは環境変化です。住まいや食の環境を自由に選べるのであれば、住まいを移動したり、食べるものを選択することで環境を変化させないという選択肢もあります。しかし、偏った情報や知識にもとづき環境を変化させると別の角度からの不確定要素や危険を呼びこむことになりますので、それぞれみなさまの事情にあった適応をおこなう必要があります。
店長です。

いまはお茶屋さんですが、学生時代は放射性マークがついたうえバイオハザードがひかれた遺伝子とかをいじいじする研究室にいたこともあります。なのでちょっとだけ普通のひとより詳しいかもしれません。皆様の不安を和らげる説明ができるのではないかと思います。言葉を選び注意しながら書きますが、結果として不安を煽るようなことになってしまったり、文意がつたわらず齟齬が生じるような結果も読まれる方の背景によっては生じるかもしれません。予めご了承のうえ、このブログで書かれる内容は参考程度におとどめ置きいただき、どうか落ち着いて、ひとつの情報源にのみ頼ることなく複合的に判断してください。

本題。9日、静岡の本山茶 一番茶の製茶から、1キログラム当たり500ベクレルを超える放射性セシウムが検出されました。このように、お茶から国の暫定規制値を超える放射性物質が検出されたのはこれが初めてではなく5月には神奈川県の足柄茶で制限を超えニュースになりました。静岡県ではそれをそのまま口にするわけではない荒茶を検査対象とするのは納得がいかないなどの理由で、いままで検査を見送ってきた経緯がありますが、今回は消費者の不安を和らげようと販売店が独自に行った調査により、結果として検出されました。本来であれば公な団体こそが先んじて調査をし、消費者や生産者の矢面に立たなければいけないと思うのですが、今回は調査をした業者にホームページでの情報公開を控えるように求めたなど、結果として消費者の不安や不信を煽ってしまっている現状については残念で、改善していただきたく思います。

正しい判断をするために偏らない情報が必要。情報を開示するには適正な調査が必要。風評被害を産まないためには、情報隠蔽よりは、わかりやすい説明が必要なのではないかと考えます。

 

・放射線の人体への影響

直ちに影響があるレベルの放射線量は生物実験などで判明しています。現在は最前線で戦われている現場以外はその水準にはありません。それ未満の低レベル放射線の影響について人間がどのような影響をうけるのか、どのような健康被害があるのかについてはきちんとわかっていません。賛同はできませんが、低線量の放射線であれば浴びれば浴びるほど健康になるという方さえ居ます。チェルノブイリ事故に学べば、事故前は100万に1人であった小児甲状腺がんがピークで1万人に1人くらいまで増加したとあります。0.01%程度の押しあげです。日本の場合も恐らく統計値として影響を図ることができるのは5年後ぐらいからであり、残念ながら現時点ではどの程度の影響があるのか情報がない者が予測することはできません。ただ、福島原発の状況が現在公式に公開されているよりどんなに深刻な状況にあったとしても民間のモニタリングの数値などと合わせて考えると、死亡率を5%もあげるほどではないのではないかと考えています。もともと日本人の死因の30%はがん(悪性新生物)であります。そして、すべからく人間いずれはその生命活動を停止します。だから、ガンになるということを恐れるよりも憂慮しなければいけないことがあるのではないかと思います。

では、何が恐るべき事態なのでしょうか?細胞は分裂して増えます。そのコピーに失敗したりすることで、ガンになる細胞がうまれます。コピーに失敗する原因は生物の設計図である染色体情報が痛むことで発生します。染色体情報が痛む原因は様々で、たばこなどに含まれる発がん性物質として認識される化学物質であったり、今回話題になっている放射線や、はたまた紫外線などでも痛みます。酸素ですら痛みます。それぐらいのものなので、痛むことも想定されていて、そのために次世代を生んだり育てたりすることで生命のバトンが引き継がれるわけです。逆にいうと遺伝子が痛むことで進化し環境適応を遂げてきたわけです。自然界や品種改良などでおこなわれる遺伝子の変異率は人間がおこなう遺伝子組換えより高いものです。
ですから、環境中の放射線量の増加により、まだ若いはずの子供の染色体が傷んでしまったり、生まれてくる子供の染色体に影響がでてしまうことは、種としても社会性動物としても非常に深刻な問題です。ガンで死ぬのは個体ですが、環境悪化は群れを滅ぼし、種を滅ぼします。このような連鎖は人間に限らず起きます。どんなに高度に文明を発達させたといっても人間が快適に生活する環境は他の生物との共存でなりたっているに過ぎません。生物バランスの崩壊が結果として文化だけでなく文明として滅ぼすこともあるのです。

日本人の人口動態をみても先行きがあまりよろしくない中で、このような環境悪化は短期的には歓迎すべき要素はありません。さらに、この度の震災で各地での地殻への応力変化でどこで地震が発生してもおかしくない状態になっています。ここ数百年の世界の地震を調べたところM8以上の地震の発生ののち30~360日以内にM7クラスの地震がおきたのは17.3%、60~720日の間にM7クラスの地震がおきたのは29%でした。次におきるかもしれない地震が放射能事故をより破局的にしたり、新たな事故を起こしてはたまりません。既におきてしまった事故はとりかえしがつきませんが、これから起きる事故は防ぐことができます。

放射性物質の環境放出は短期的に解消するものではなくその影響は積算されます。現在のところ人間への影響は限定的かもしれませんが、影響がでる生き物はいますし、その生き物が人間に影響を及ぼす確率もあります。また、新たな事故で放射線量が高すぎて生物が生存することができない過酷環境を新たにつくってはいけません。

・体内被曝

最前線の事故現場で戦っている方以外はただちに影響がないレベルの放射線量といいましたが、放射能を発する放射性物質が直接体内にはいることで、予期せず影響があるレベルに達してしまう可能性があります。放射性物質が拡散している地域は放射線量が高くなりますが、放射線量が高い地域だからといって、放射性物質を体内に取り込む確率が一様にあがるわけではありません。一説には遠くまで飛んだ粒子のほうが細かいから扱いが厄介だともいわれています。チェルノブイリ事故の時は、子供たちに影響がでたので調べてみたら飛び地にできたホットスポットを発見するに至りました。せめて日本では子供たちに影響が出る前にホットスポットを見つけてもらいたいものです。
放射性物資を体内に取り込むのは確率の問題(運)になります。またそれをどれだけ貯めこむかは確率の積み上げになります。言われているのが、体内被曝で考えた場合10倍から100倍程度の影響があるものとして考えるのが妥当とのことです。人間の新陳代謝により100~200日程度で体外に排出されるのでずっと影響があるわけではありませんが、その間は細胞が放射線に曝露しつづけますし、環境が変わらなければ新たに取り込まれることもあるでしょう。
今回、お茶から1Kgあたりから500ベクレル以上の放射線量が検出されました。放射線が観測されるということは、放射性物質が内在しているということです。このようなお茶をそのまま食べると体内被曝するということです。この程度の線量でも、ただちに影響があるものでありませんが、さきほども書きましたが積み上げられますので、ずっと放射線量の高いものをとり続けることで危険が増します。ただし、お茶についてフォローしますとお茶飲料として淹れた状態からは「不検出」となっていました。どのような状態で口にするかも重要な要素です。お茶などには遺伝子が傷つかないようにしてくれる、ポリフェノール類や抗酸化作用のあるビタミンもあります、一概に危険だから飲むのやめたからといって総合的にどちらがよいかの判断は難しいラインなのではないかとも思います。いろんな産地のいろんなものを偏らずに食べることでリスク分散をするよりありません。
それに、お茶っ葉から出ているということは、そもそも濃度の差こそあれ東日本の土壌、海洋がすでに相応に汚染されているということです。新芽をとって集め水分を飛ばした検査しやすいところにばかり目を奪われてはなりません。東日本では屋根に降り積もり雨樋にたまった泥や砂塵からも放射性物質はでてきています。茨城県では下水を処理した焼却灰から1キロあたり16,800ベクレルを検出していますし、都内でも8000ベクレル/Kgに達しています。山形では、屋上の排水口の汚泥から68万ベクレル/Kgを検出しています。もはや、特定の食べ物を食べなければとか水を飲まなければという問題ではなくなっています。物理的に住まう地域を大きく移動しないのであれば、うまく折り合いをつけ危険をさけていくよりありません。

・ヨウ素とセシウム

チェルノブイリ事故では甲状腺ガンなどを引き起こしたとされる放射性物質ヨウ素。これの半減期は8日で事故経過80日以上経過している現在では事故当初の1024分の1以下になっています。ですので今日現在では主役はセシウム137となります。セシウム137の半減期は30年であります。
セシウムにはヨウ素剤やヒジキやわかめなどのヨウ素を多く含む食品摂取などの対策は有効ではありません。30年で半減期を迎えることから自然界にも人間の寿命から考えると長いこと存在することとなります。生物濃縮なども気にしなければいけなくなってくるでしょう。逃げずに戦うのであれば、影響が本格化するまえに、科学的に、もしくは生物学的に植物や藻類などによる固着で環境改善を図っていくよりほかありません。
植物は葉や茎に放射性物質をため、根、さらに実や種子へとだんだん影響がすくなくなるそうです。放射性物質の固定化はできますが、ホットスポットに植えた植物が今度は放射性廃棄物となってしまいます。さらに、下水処理したなどのスラグ、放射性廃棄物をどのように処理をするかの方向性をきめねばなりません。政治には期待できませんが政治の役割です…。

・放射能汚染と経済

選択をする自由が消費者にはあります。様々な要因で選択の余地がない場合もあります。海外が日本のものを選ぶかという反応は選択の余地がある前者です。日本は貿易黒字に支えられ内需を安定させていた国でしたが、5月の貿易統計速報によると先月は1兆円を超す貿易赤字でありました。リーマンショックを超す経済の冷え込み指標も観測されています。震災後の倒産件数は前年同月比9.7%増。ともに数字としてリーマンショックで体験した経済の動きをより悪い方向でなぞっています。そこからすでにある程度の未来が予測できます。輸出に響く円高。コーヒーや小麦などの商品価格は前年度比2倍にまですでに値上がりしており、現段階で値上げが相次いでいます。小売価格への反映も時間の問題でしょう。
容易ならぬ事態です。このままでは放射能で死んでしまう人よりも、経済的に殺されてしまうひとの方が多いのではないかと思います。荒茶から放射線量が検出されて、生産者保護のために県が動くのも心情的には理解できます。新茶が出荷できなければ食ってはいけません。漁師も漁ができねば食っていけません。農家が作付けができなければ収穫することができません。日本で作ったものが必要とされなければつくれません。経済動物としてもピンチです。本当にまいりましたね。これからどうしたらいいのかを真剣に頭をつかって考えなければいけない時代になったのかなと思います。変化に適応していくよりありません。

数々のデスマーチをくぐってきた身からいわせてもらうと、お茶と茶菓子を飲んで談笑する余裕がなくなったプロジェクトは破綻します。わずかなりも余裕をもって笑顔はわすれずに行きましょう。眉間にシワが寄り、クマがたまったひとがいたらお茶に誘ってあげてください。

はぐら茶屋の紅茶をおともにいかがですか?

 

・参考リンクなど
放射性物質検出、静岡県が公表を制止 食品通販業者に

www.asahi.com/national/update/0610/TKY201106090710.html

静岡県が、自主検査で国の基準を超える放射性物質が検出されたとホームページ(HP)で公表しようとした東京都内の食品通販業者に、公表を控えるよう求めていたことが分かった。

製茶検査で本山茶が放射性物質の規制値超え 他の県調査箇所は下回るwww.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20110610/CK2011061002000152.html?ref=rank

静岡県は9日、静岡市葵区の藁科地区の茶工場で製造、出荷した「本山茶」の一番茶の製茶から、国の暫定規制値(1キログラム当たり500ベクレル)を上回る679ベクレルの放射性セシウムが検出された、と発表した。

 

生産者らに衝撃/製茶の放射性物質検査

mytown.asahi.com/shizuoka/news.php?k_id=23000001106100002

 

【震災関連:ぱれっと/商品】静岡県産煎茶で放射性物質が検出されましたのでご報告いたしますcorporate.radishbo-ya.co.jp/info/info_598.html

足柄茶の収穫断念し「深刈り」…セシウム除去で

www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110610-OYT1T00229.htm

神奈川県西部の「足柄茶」の産地では、今年の収穫を断念し、茶葉を「深刈り」する動きが広がっている。

 

東日本大震災:下水施設焼却灰に放射性セシウム 県「健康影響ない」 /茨城mainichi.jp/area/ibaraki/news/20110602ddlk08040294000c.html

県内4カ所の下水処理施設で5月30、31日に採取した焼却灰から1キロ当たり最大1万6800ベクレルの放射性セシウム

 

東京・八王子で下水道汚泥焼却灰から放射性物質

sankei.jp.msn.com/region/news/110530/tky11053022300009-n1.htm

東京都八王子市は30日、同市北野下水処理場の汚泥焼却灰から、放射性セシウム137を1キログラム当たり7910ベクレル

 

[医療解説] 放射性ヨウ素の影響… 小児甲状腺がん 高い治癒率

www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=41305

事故の5年後から甲状腺がんになる子どもが増えた。国連のまとめでは、事故当時18歳未満だった6848人が91年~2005年の15年間に甲状腺がんを発症した。周辺地域での子どもの甲状腺がんの年間発症率は、もともと100万人に1人程度

 

東日本大震災について~「よくあるご質問と回答」(野菜)の更新について~www.maff.go.jp/j/press/seisan/kakou/110603_1.html
貿易赤字、最大に 5月上中旬 1兆円、震災で輸出減続く

www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9693819481E2EAE2E2978DE2EAE2E4E0E2E3E39F9FE2E2E2E2;bm=96958A9C93819499E2EBE2E1E28DE2EBE2E4E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2

 

5月の倒産1071件 1年10カ月ぶり増 震災関連、前月比2.5倍にwww.sankeibiz.jp/macro/news/110609/mca1106090504002-n1.htm

 

 

5月の企業倒産件数9.7%増

www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20110609-OYT8T00310.htm

 

都内各地の放射線量測定結果

www.jcptogidan.gr.jp/html/menu5/2011/20110525195904_3.pdf

 

 

生活空間における放射線量マップ

www.numtech.co.jp/column/20110525/

 

県施設排水口で高濃度セシウム

mytown.asahi.com/yamagata/news.php?k_id=06000001106090001