お茶と癌と肥満

お正月でお屠蘇をのみました。
非常に馴染みの深いスパイスが多くはいっていて、なんでも江戸時代に医者がお年始に配っていたものと知り、なるほどと思いました。丁子(クローブ)は当時インドネシアのほうでしかとれていなかったはずなので、ものすごく高価だったはずなので薬として珍重されていたのも納得です。

先日、某先生から、とある病気とお茶の関係についてご案内をいただきました。そちらについては、まだ公表してよいものか判断できないので、また日をあらためてご紹介するとして、今日は比較的よく知られている、癌や肥満とお茶などの食べ物の関係について少し書いてみたいとおもいます。

最近、TEDという芸術や科学、エンターテインメントの分野で活躍する人物が集まり講演する動画をみて楽しんでいます。基本英語ですが、英語がわからないかたでも日本語の字幕を有志がつけてくれているので安心してみることができます。ずいぶん古いものからずっと見ているのですが飽きません。

その中のひとつのセッションで面白いものがあったのでご紹介します。

ウィリアム・リー: 癌が消滅する食し方
www.ted.com/talks/lang/ja/william_li.html

癌の原因は30-35%が食生活に起因する。人間に対して発がん性効果がある食品などはわかっている。では逆の食品などはないだろうか? といテーマでの発表講演です。結論だけをまとめておくと、癌や肥満に効果が認められたということです。
抜粋します。

食べ物がガンを誘発する 環境要因の 30~35%を占めていたことです

ここで明確なのは 食事から取り除けるものを検討することです しかし私はまったく逆の方法を取り 食生活に加えられるものを考えました もともと血管新生抑制の作用があり 体の防御システムを高めて ガン細胞を増やす血管をやっつけるものです つまり食べ物でガンを退治する可能性を問い 肯定的な結果を導きました

彼はこのように食品を評価できる仕組みをつくりたいとのことでした。

我々は4種のお茶で実験しました よく飲まれている種類です ジャスミン茶 煎茶 アールグレイ 我々がつくったブレンド茶 お茶の効能が 異なるのは 一目瞭然ですね 面白いことに 効能が低かった2種類の お茶を混ぜて ブレンド茶にすると それぞれ単独のときより効能が増しました 食品の相乗効果です

緑茶やジャスミンティー単体では効果が低かったものの、混ぜたら効果があがったというのは面白いですね。
煎茶もジャスミンティーもアールグレイも香りづけが違うもののすべて主な原材料は一緒で、茶葉の発酵度合いがことなるだけです。それが、ブレンドによって変わるのはどういうわけだろうかと、気になるところです。

調理したトマトを1週間に 数回食べた男性は 前立腺ガン発生率が 半分に抑えられていました トマトにはリコピンが豊富に含まれています リコピンは血管新生抑制物質ですが この研究のもっと興味深い点は 前立腺ガンを発症した男性でも トマトソースを より多く食べていた人には ガンを大きくする― 血管が少なかったのです

某トマトばかりをあつかっている大手食品メーカーの友人の結婚式にいったら同席だった年配の方からずっとリコピンがどれだけいいかと力説されたのを思い出しました。トマトやオリーブオイル、紅茶やコーヒーは西洋でもよく食材につかわれるため研究が進んでいるように思います。いろいろな文献でみかけます。
そういえば大学のとき、細胞系の研究室だったのですが、同じ研究室の人に紅茶や赤ワインに含まれるポリフェノールについて調査をしていた人がいました。今回の食品リストにも紅茶や赤ワインがでてきますが、羨ましいテーマだなぁと思った限りです。

疫学的証拠は十分にあります 情報化時代にいるのですから 国立医学図書館のデータベースのように 確かな情報源はすぐに見つけられます 食事や一般薬に基づく ガンのリスク軽減のための 疫学研究の情報を探せます これは誰でも調べられることです

誰でも調べられるとは言え、データベースから調べるのは億劫ですよね。調べ方もよくわからないし・・・。
そこで、セッション中で表示されていたグラフから食品部分をぬきだしておきました。

※青、癌に効く 黄、共通に効く 赤、肥満に効く
Vitamin E ビタミンE(青魚や大豆、落花生、アーモンドなどの豆類に含まれる、穀類にも)
Tea 紅茶
Turmeric ターメリック/うこん
Glucosamine(グルコサミン / カニやエビの殻の部分に多く含まれる)
Green tea 緑茶
Lavender ラベンダー
citrus1 (柑橘系の果物1)
citrus2 (柑橘系の果物2)
Brassica(アブラナ)
Red grapes (赤ぶどう)
Garlic にんにく
Soy 大豆
Berries ベリー系(ラズベリー、いちご、クランベリー、ブラックベリー、ブルーベリーとか?)
parsley(パセリ)
Artichoke (アーティチョーク)
soy extract (大豆抽出物)

興味深い表ですね。
ビタミンEには調べたら注意がありました。

最近の報告において、サプリメントとして過剰摂取すると死亡率が高まるとの報告も出され、過剰摂取に対する警鐘となっています (出典: 独立行政法人国立健康・栄養研究所 hfnet.nih.go.jp/contents/detail176.html

だそうです。サプリメントの過剰摂取は気をつけてください。
バランスのとれた食生活で、いろいろな食材をまんべんなく取っていれば、リスクも分散されていいですよ。なにごとも過度はよくありません。人間は水でさえ1日10リットルも飲めば中毒症状をおこします。

食べ物と病気に関する科学がここに来て改めて見直されているようにおもいます。
経済に投資するよりも保険、健康に投資したほうが経済成長が早いという統計もあります。(これもTEDで見たんですけどね! www.ted.com/talks/lang/ja/hans_rosling_shows_the_best_stats_you_ve_ever_seen.html
景気対策するならまず健康対策だー。

ただ、非常に残念なことに健康や美容が絡むと日本はひどいことになりがちです。
日本ではハーブなどは健康食品に類されていて、大手のネットショップで販売するときには効果効用をうたってはいけないなど、薬事法などの厳格なチェックとレギュレーションがあるのですが、街中の店頭や、他のショップをみると、あまり守られているようにも思えません。また眉唾のものが非常に高価な値段でやりとりさせていたり、健康のためなら死んでもいい的な健康原理主義のような方が情報の正しい整備に混乱をきたしているようにも感じられます。紅茶きのこブーム的なよくわからないブームは恐ろしいです。

そういう点で、栄養士や管理栄養士とかと同じようなカテゴリでビタミンなどの栄養素以外の側面からの評価づけが体系的に整備されるといいなと思いました。それが有効利活用されるには文化的な水準という意味で難しいかもしれませんが。

余談ですが、ときどきふとアーティチョークが食べたくなるんですけど日本ではほとんどでまわってないんですよね。