紅茶のはじめかた 値段でえらばされない

選んだつもりにならないで

多くのひとは一番わかりやすいところで比較してしまいがちで同じ系統の商品だと値段で比較してしまうことが多いです。しかし、内容が違うものを値段で比較するのは本質的にはあまり意味がないことです。
紅茶も缶にはいっているものは少ないものでも50gだったのですが、最近は35gとか25gとかがでてきていて減少傾向にあります。スーパーにいってもチーズやポテトチップス、納豆などの内容量減少がとまりませんね。一般的に内容量の変化は見落とされがちで、価格の変動には敏感だそうです。
紅茶と一口にいっても当店で扱っている商品だけでも数十種類を超え値段もさまざまです。紅茶にもいろいろあるんだということを知らないまま値段だけで選んでしまうのではあまりにも残念です。最初に値段で選んだものが口にあわなかったりして、もういいやとなってしまうとさらに残念です。紅茶に限った話しではありませんが、値段だけで選び続けていてはいつまでたっても買いたいものを選べるようにはなりません。選ばされているだけにすぎません。

紅茶の値段はこうしてきまる

本来値段というのはそれを欲しいひと同士での競り合いで決まります。魚市場や青果市場、美術品などのオークションではいまだに競り合いで決まっています。大量生産が可能になってからは「この値段じゃないと売らないよ」という先に価格を設定する形がでてきました。紅茶はパッケージに意匠をほどこしたり、ティーバッグ加工されるなどの面で工業製品の要素が強いものもあります。

しかし、もとをたどれば紅茶は農産物であると同時に、ワインや、チーズなどと同じ加工が必要で世界にも愛好家がおおい嗜好品となります。出回る量と比較して欲しがるひとが多ければ希少性がでてきます。
なので高級品はティーオークションなどのセリで値段が決定しています。みんなが欲しがるものほど高くなりますし、供給量がすくなければ高くなります。
他方、値段がつかないような紅茶もあります。これは品質が売り物に値しないということではなく、主な理由は無名すぎたり、そのまま流通させるには問題があるなどの理由で欲しがる人がいないため値段をつけられないという理由です。なんでこの商品はこの値段なのだろうかという理由を考えてみるのも面白いかとおもいます。

ダージリンという茶葉

日本国内の紅茶事情をみてみると、百円ちょっとで缶飲料のような形で流通しているものもあれば、50グラムで5000円を超えるものもあります。これは何故でしょうか。

紅茶を茶葉からいれたことがないような方でも知名度がある「ダージリン」という紅茶をみてみましょう。流通品のなかで世間的に一番高い値をつけるのもダージリンですし、他方量販品としてスーパーでも購入できます。ペットボトルや缶紅茶などの一番お安くも出回っています。
日本で販売されているダージリンを集めると生産量よりも多くなるなんていう笑い話しがありますが、黒豚や和牛などの例をみればそれが事実だったとしても不思議ではないのかなとも思います。マグロの赤身だとおもってたがアカマンボウでしたなんてに消費者として遭遇することは往々にしてありうることです。

ダージリンを少しでも使っていればダージリンだとか、ダージリンエッセンスをつかっているからダージリンだとかいろいろあります。

 ダージリングレード模式図

図はダージリンのグレードとその流通量をあらわしています。
実際は、このように均等に分布しているわけではなく、上の小さな三角形の中にシルバークラス以上のグレードがギュっと詰まってるいような感じです。通常はノーマークのスタンダード茶葉か、茶葉として売り物にするには不適格なので細かく切り刻んでしまったもの、細かく切り刻んだときに出たクズ茶(ティーバッグにつめてつかいます)などが流通の殆どです。
茶葉の形状や実際何がどう違うのかについては後述しますが、例えば新芽などは少量しか収穫できません。手間も変わってきます。さらに、ここに実績のある農園や収穫時期などによって、希少性が加わります。
収穫した時期で価格が変わるのは、ダージリンや緑茶のような比較的低発酵な紅茶にしかみられない独特の習慣ですが、初ガツオみたいなものなので最初のほうにとれたほうが高いです。

例えば2010年のティースタバレー農園のファーストフラッシュはルピシアさんでDJ-18のものが2,600円しますが、それよりも収穫時期が遅くなったDJ-46をうちでは1,350円であつかうことができます。同じお店が仕入れているわけではないので、正確な比較ではありませんが、時期が遅くなってしまうと需用が減ってしまうので競争がさがり仕入れ値がさがり、販売価格もさげることができるわけです。

このようにハイクラスの紅茶の値段はいまでも世界の紅茶好きの人々との間で直接的、間接的に競り合ってきまっています。色がついていればいいや~という程度のこだわりであれば原材料としては紅茶はあつかってはいるけれども、工業製品として原価の積み上げで値段が決定します。そこに輸送費、広告などの販売管理費、パッケージ費やパッケージのデザイン料が反映される形です。
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「紅茶とは」については以上でいったん終了です。
次回は、今回もすこしふれた紅茶の種類(産地や形状)について書いていきたいと思います。
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