STAP多能性細胞と紅茶のpH

今日はちょっとBTなエントリーをどこに書こうか迷ったあげくお店のブログに書いてみます。紅茶程度のpHの溶液に30分浸すだけでiPS細胞のように細胞が初期化され、多能性細胞になるというぶっとびすぎているニュースが世界を流れました。にわかには信じられない内容です。

 

作り方は簡単だ。小保方さんらは、マウスの脾臓(ひぞう)から取り出した白血球の一種のリンパ球を紅茶程度の弱酸性液に25分間浸し、その後に培養。すると数日後には万能細胞に特有のたんぱく質を持った細胞ができた。

 

とりあえず、理化学研究所とワカメスープのリケンは全力でチガウから!ワカメスープにお酢いれても若返らないから!あれ理研ビタミン株式会社で、こっち独立行政法人理化学研究所だから!!というツッコミと、

SMAPとSTAPはもしかしたらそれほどズレてもないんじゃないかなという、弱々しいツッコミのもと、そういえば私も応用化学で細胞工の研究室で海の微生物の遺伝子をうりうりしていたこともあったなーと物思いにふけりながら、紅茶屋の店長が紅茶のお話しを交えながらお届けいたします。

 
うちのお店には「紫芋紅茶」というものがあります。
先日、お客様から「赤色になってしまいうまく紫色にできない」というお問い合わせがありました。
実は紫芋の色素というのは、リトマス試験紙やあじさいのように酸性かアルカリ性かで色が変わる性質があります。酸性であれば赤色に、またアルカリ性であれば青色になります。中間が紫色です。


hagurashop.com/tea-leaves/cat-flavor/l-316.html

日本では、殺菌消毒のため蛇口から出る水道水には塩素が一定水準残留していることが義務づけられていて、この塩素が沸騰した後の水にも残っておりますと水は若干ですが酸性となるわけです。これをよく沸騰させるなどして塩素を蒸発させることでもともとの水の酸性度を下げることができます。
ミネラルウオーターは含まれるミネラルの種類によって酸性のものとアルカリ性のものがあります。水道水も取水地域によってpH濃度は若干ですが変わるようです。知り合いのカフェさんやレストランなどでは浄水器以外に整水器をつかってアルカリにすこし寄せて使っているところもあります。
酸性が酸味で、アルカリ性が苦味です。レモンや炭酸が酸性で、重曹やにがりなどはアルカリです。紅茶はpHでいうと5.5、お酢がpH3程度の酸なので500倍に薄めた程度の酸性です。味覚が敏感でないとほとんどわかりませんね。紫芋紅茶が、ほどよく藤色になれば、だいたいpH5.7ぐらいでしょう。
さて、このぶっちゃけ紅茶程度の刺激が生物の細胞のリセットスイッチを押すらしいです。

pH5.7 37℃ 30分

 

こんなにも簡単な外部刺激で未分化細胞にリセットされます。そりゃ過去数百年の生物学の歴史をバカにしているとリジェクトもされますわ。でも、それが実証されたということは、まさに数百年分をひっくり返すほどのインパクトがあったわけです。一周まわった感じがします。

だって、こんなぬるくなった紅茶程度の条件で多能性細胞がつくれるっていったいどういうことですか? ティーコゼーのなかで30分保温するだけでクローンのもとができちゃったなんて、なんか、本当に不思議の国のアリスより奇妙な世界です。

メカニズムの解明やどのような細胞外環境刺激が高効率なのかはこれからだとおもいますが、でも、細胞外環境により細胞が未分化できるというのは、ほんとうにテクノロジーの新境地をみたきがします。

もしかしたらアルカリ性に保たれた血液が傷口にあふれて空気に触れて傷をなおすように生命の仕組みとしては当たり前のことなのかもしれませんが、その仕組を人間の知性が認知できるようになるというのは絶界隔絶の一歩です。

緑色蛍光タンパク質GFPなどマーカー遺伝子で観察できるようになり、現代化学の再現性をともなって予断先入観なく、かつエビデンスベースの実験を積み重ねて証明できたという感じでしょうか。雨垂れ岩をも穿つとはまさにこのこと。
デバッグができるようになって見えてくることもあるものです。

 

なんにせよ一段落、これからだとおもいますが、紅茶でものんでご一服ください。

楽しみになってきましたという、感想をなぜかお店のブログに書いちゃうのでした!

 

ご参考URL:

www.kiriya-chem.co.jp/tennen/imo.html
tooth-health.happy.nu/ph.html

 

体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見
-細胞外刺激による細胞ストレスが高効率に万能細胞を誘導-
www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/

 

新たな万能細胞開発 iPSより効率的に 神戸の理研など
www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201401/0006671555.shtml

新しい万能細胞作製に成功 iPS細胞より簡易 理研
www.asahi.com/articles/ASG1Y41F4G1YPLBJ004.html

泣き明かした夜も STAP細胞作製、理研の小保方さん
apital.asahi.com/article/news/2014013000016.html